当社は、この度初めて従業員を募集しようと思うのだが、従業員を募集する際には、法律上の規制などあるのか。
労働者募集には、大別すると文書募集、直接募集または委託募集といった形態がありますが、労働者保護などの観点から、職業安定法により、一定のルールが定められており、違反した場合には罰則が適用される場合もありますので、これに違反しないように、十分留意する必要があります。
労働者を募集するにあたって、どのような方法により行うのかについては、事業主の判断に委ねられていますが、募集を行うにあたっては、労働者の保護を図るなどの観点から、職業安定法により、一定のルールが定められています。
<POINT1.労働者募集の共通ルール>
それぞれの労働者募集の形態ごとの詳しい内容については、ほかの質問の中で詳しく述べますが、各形態に共通のルールは、次のとおりとなっています。
第一に、労働者の募集を行おうとする者は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、金銭等の利益を受けてはなりません。
第二に、労働者の募集を行おうとする者は、労働者になろうとする者に対して、その従事すべき業務の内容および賃金、労働時間その他の労働条件を明確に示さなければなりません。
特に次の事項は、書面の交付(求職者が希望する場合には電子メールも可能です。)により明示しなければなりません。
- 従事すべき業務の内容(従事すべき業務の変更の範囲を含みます。)
- 労働契約の期間
- 試用期間の有無および期間、試用期間中の労働条件
- 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含みます。)
- 就業の場所(就業場所の変更の範囲を含みます。)
- 始業および終業の時刻、所定労働時間をこえる労働の有無、休憩時間および休日に関する事項
- 賃金の額に関する事項
- 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用に関する事項
- 労働者を雇用しようとする者の氏名または名称
- 派遣労働者として雇用しようとする場合は、その旨
- 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項
また選考の過程で、当初明示した労働条件を変更する場合には変更後の労働条件を求職者に明示する必要があります。
第三に、労働者の募集を行おうとする者は、広告等により求人もしくは労働者の募集に関する情報または求職者もしくは労働者になろうとする者に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、広告等により労働者の募集に関する情報等を提供するときは、正確かつ最新の内容に保たなければなりません。この点については、「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等に関して適切に対処するための指針」(平11.11.17労告141)においてその例が示されています。たとえば、求人情報を提供するときに意図してその情報と実際の労働条件を異ならせた場合や、受理していない求人を紹介できると広告した場合には、虚偽の表示に該当しますし、虚偽の情報でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、誤解を生じさせる表示に該当します。ただし、求人等に関する情報等が虚偽であることや、募集情報等が誤解を生じさせる表示であることを募集情報等提供事業者が知り得ない場合に、ただちに職業安定法第5条の4第1項に違反することとなるものではありませんが、改変するなど積極的に実際と異なる求人等に関する情報を提供すれば、同法第5条の4第1項に違反することとなります。また、募集情報等の提供の中止や内容の訂正の依頼があった後に対応しない等、誤解を生じさせるおそれのある表示を漫然と提供し続けた場合にも、同法第5条の4第1項に違反するおそれがあります。同指針では、これらに関する具体例が次のようにいくつか示されており、必要に応じ、この指針の全文によって具体例の内容全体を確認されてもよいでしょう。
- 関係会社を有する者が労働者の募集を行う場合、労働者を雇用する予定の者を明確にし、当該関係会社と混同されることのないよう表示しなければなりません。
- 労働者の募集と、請負契約による受注者の募集が混同されることのないよう表示しなければなりません。
- 賃金等(賃金形態、基本給、定額的に支払われる手当、通勤手当、昇給、固定残業代等に関する事項をいいます。)について、実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはなりません。
- 職種または業種について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはなりません。
なお、当事者の合意に基づき、求人等に関する情報から実際の労働条件を変更することとなった場合は、虚偽の表示には該当しません。
第四に、労働者の募集を行おうとする者は、労働争議に介入するような募集は行ってはなりません。
第五に、求職者の個人情報を収集し、保管し使用するにあたっては、業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにした場合にかぎられています。
<POINT2.インターネット・SNSなどによる募集>
インターネットやX等のSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています。
昨今、インターネットで犯罪実行者の募集が行われる事案が見られ、その中には、通常の労働者募集と誤解を生じさせるような広告等も見受けられます。このため、労働者を募集する際には、誤解が生じないよう、次の事項を必ず表示することとされています(職安法5条の4第1項、令6.12.18職需発1218第1)。
- 募集主の氏名(名称)
- 募集主の住所(所在地)
- 募集主の連絡先(電話番号等)
- 業務内容
- 就業場所
- 賃金
これらのルールは、労働者募集を行うにあたっての、基本的なルールであり、また、場合によっては、罰則が適用されることもあり得ますので、十分に留意したうえで、適切な労働者募集に心がけてください。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
《参考となる法令・通達など》
- 職安法5条の3、5条の4、5条の5、39条、40条、42条の2
- 職安則4条の2
- 令6.12.18職需発1218第1
