当社では従業員に業務内容に応じて必要な資格を取得させており、資格取得に必要な研修費用、受験費用等は会社が負担している。
現在、従業員の中で何年たっても資格が取得できない者がいる。このような者は、会社の費用負担が大きくなる一方のため、配転させたいと考えているが可能か。
当該従業員に対して配置転換を命令する場合、その根拠が
- 労働契約または就業規則にあること
- その配置転換が業務上の必要性に基づくもの
- 権利の濫用になるものでないこと
が必要です。
<POINT1.配転命令の根拠>
配置転換命令が可能かどうかは、労働契約あるいは就業規則の定めによることになります。
労働契約法(7条本文)では、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。」としていますので、配置転換について就業規則に定めがある場合には、採用の際に、当該社員に就業規則を説明するなどして、配置転換することがある旨周知されていれば、労働条件の1つとなります。
なお、令和6年4月からは、すべての労働契約の締結、有期労働契約の更新の際に、雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加え、就業場所・業務の内容の変更の範囲についても明示することが必要になりました。
また、配置転換について労働契約および就業規則に定めがない場合でも、労働契約法(8条)は、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」としていますので、配置転換は個別の労使の合意により可能となります。
ただし、業務上の必要性がないような配置転換命令は、権利の濫用として無効となることがあります。
<POINT2.業務上の必要性>
配置転換(転勤)に関する最高裁判例では、労働協約および就業規則に、業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、全国的に転勤も頻繁に行われている会社に採用された営業担当者について、労働契約が成立した際にも勤務地を限定する旨の合意がなされなかった事情の下で、会社は個別的同意なしに勤務場所を決定し、転勤を命じて労務の提供を求める権限を有するとしたうえで、要旨、
- 使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、
- 使用者の転勤命令権を濫用することは許されないところ
- 転勤命令について、業務上の必要性が存しない場合または業務上の必要性が存する場合であっても、その転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、もしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を超える不利益を負わせるものであるときなど、特段の事情の存する場合でない限りは、権利の濫用になるものではない。
- 業務上の必要性についても、その転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、その存在を肯定すべきである。
としています(=東亜ペイント事件[最判昭61.7.14])。
<POINT3.配転命令が可能な場合>
したがって、お題の場合、当該社員に対して配置転換を命令する根拠となるものが労働契約または就業規則にあり、そのうえでその配置転換が業務上の必要性により行うものであって、権利の濫用になるようなものでなければ、本人の同意を得ることなく配置転換を命令することは可能であると考えられます。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
《参考となる法令・通達など》
- 労基法15条
- 労基則5条
- 労働契約法7条、8条、12条
《参考となる判例》
- 東亜ペイント事件[最判昭61.7.14]
