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■試用期間中と本採用後の賃金に差について確認する

 当社では、試用期間中の賃金は時間給とし、本採用後は月給としているが問題はないか。

 また、試用期間中の賃金は本採用後の賃金と比べて低く設定しているが、具体的にはどの程度の差まで許容されるのか。最低賃金を上回っていれば、どんなに差があってもよいのか。

 試用期間とは、採用直後の一定期間中に、自社の労働者としてふさわしいか、性格、職業能力、勤務態度などを観察するもので、多くの企業で設けられている制度です。なお、試用期間については、直接規制する法律の規定はないので試用期間の労働条件をどうするかは、企業の考え方に任されています。

 したがって、試用期間中の賃金を時間給とすることや、本採用後の賃金と比較して低く設定することも可能となります。

 しかしながら、最低賃金を上回っていれば、どんなに安く支払ってもよいかとなると、法的に問題がなくとも、会社の試用期間設定の目的、その期間の長さ、従事する業務、労働者の募集上の問題、労働者のモチベーションの維持などを総合的に検討する必要があります。あくまでも、会社の正社員を選考するためのものであり、パート労働者やアルバイトの採用とは違い、優秀な人材を確保・育成するという戦略的な視点が必要と思われます。

<POINT1.試用期間とは>

 一般に多くの企業では、正社員を採用するに当たり、面接試験・筆記試験などの採用選考を実施することで、従業員としての適格性の判断をしています。

 しかし、それだけでは長期間の雇用を維持していけるかどうか判断できないため、多くの企業では一定の期間を試みの期間として、実務につかせて、その勤務状況等をみることで本採用にするか否かを決定しています。この期間が「試用期間」と呼ばれ、入社後3か月ないし6か月程度の期間を設けています。

 この試用期間の労働関係の法的な性格については、判例では、試用期間を正社員の契約の一部とみており、従業員として「引き続き雇用することが適当でないと認められる合理的理由がある場合には解約できる」旨の解約権が留保された労働契約であると解しています。

 つまり、試用期間中の解雇は、通常の解雇より広い範囲の解雇の自由が認められるとしています(三菱樹脂事件[最判S48.12.12])。

 このように、試用期間中は正社員より不安定な地位に置かれているので、会社は試用期間が終了するまでの間に、本採用にするかしないか決定して通知する必要があります。

 また、試用期間の長さについては、特に法的な制限はありませんが、試用期間の目的はあくまでも期間を設けて本採用の適格性を判断するためのものであり、合理的な範囲を超えた長期の試用期間は公序良俗に反しているとされ、1年を超える試用期間が無効とされた判例があります(ブラザー工業事件[名古屋地判S59.3.23])。

 したがって、試用期間を設ける場合、その長さは合理的な期間であることが求められ、一般には3か月から6か月程度が多くなっています。

 そのほか、試用期間中の労働者に対しては、労働基準法第21条第4号の適用があり、試用期間中の14日間は解雇予告制度が除外されますが、その期間が14日を超え引き続き雇用されていれば解雇予告制度が適用されます。

 また、平均賃金の算定において、試用期間とその間の賃金は除外して計算されます。これは、試用期間中の賃金が本採用後の賃金より一般に低額になることを想定しているためです。

 

<POINT2.試用期間中の労働条件>

 試用期間中の労働者は、正社員として労働契約は成立していますが、本採用されているわけではなく、見習い中の労働者であり、その労働条件は本採用された場合と違いがあることは差し支えないとされています。ただし、これは、あくまでも試用期間という短期間だから許される労働条件の格差であると認識する必要があり、労働者を使い捨てるような濫用は許されないものです。

 賃金額についての法的な規制は、最低賃金法で最低額が規制されているだけであり、それ以上であれば賃金額は労使が合意すれば自由に決定できます。試用期間中の労働者の賃金を本採用者より低額な賃金額とする場合は、重要な労働条件であることから、就業規則にその旨を明確に記載していなければならないことになります。

 また、その他の試用期間中の労働条件についても就業規則や労働契約などで、その期間の長さ、更新の有無、賃金額、諸手当支給の有無などが明確に定められている必要があります。特に時間給のように賃金形態が異なる場合には、試用期間中の賃金(時間給)と本採用の賃金(月給)を明示していないと、応募する労働者に誤解を与えることになります。これは、諸手当についても同様で、試用期間中に支給しない手当がある場合は明示が必要と考えます。

 さらに、労働契約の締結に際し労働者には、労働基準法第15条による労働条件通知書を交付しなければならず、これには本採用後の初任給の明示だけでは不十分で、試用期間中の賃金も明示する必要があります。

 

<POINT3.試用期間中の賃金の留意点>

 新規労働者に対する採用時の賃金は、初任給と呼ばれていますが、この初任給と試用期間中の賃金が大きく違っている場合には、募集時の労働条件の明示の際、試用期間を延長した場合、試用期間が長い場合など、労働者の採用やその間の運用が難しくなります。なぜなら、初任給には世間相場があり、しかも社内のアルバイトやパート労働者と同等の低賃金とすることは、優秀な新規の正社員を確保・採用することが難しくなると考えられ、在籍している労働者との賃金のバランスを考えることが必要となります。特に年功賃金制を採用している企業にとっては、はじめから初任給を低く設定されており、試用期間中をそれより低い賃金とする必要性があるか検討することが必要です。

 また、実施する場合には、仕事給とされる基本給の部分を低額にすることが考えられますが、基本給の額は一般に企業における労働者の序列を表すことになり、企業の労働者に対する評価を示し、労働者のモチベーションに大きく影響を与えます。

 さらに、試用期間中は労働者の教育・育成期間でもあり、試用期間経過後、本採用として長期雇用の正社員となることを考えれば、労働者のプライドや勤労意欲を高めることは大変重要なことであり、試用期間中の賃金を低額にできるといっても限度があるといえます。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


≪参考となる法令・通達など≫

  • 労基法15条、21条
  • 昭24.5.14基収1498
  • 三菱樹脂事件[最判S48.12.12]
  • ブラザー工業事件[名古屋地判S59.3.23]