既に当社を辞めて遠くの実家に帰ったアルバイトに、未払賃金3日分がある。
最近このアルバイトから未払賃金の請求を受けた。
当社の賃金は現金手渡しのため、アルバイトに取りに来るように言ったが、旅費もかかるし、銀行口座もつくっていないので、現金書留で送ってほしいと言われた。
そこで、現金書留により送金を行いたいのだが問題はないか。
労働基準法上の「直接払の原則」とは、賃金は直接労働者本人に支払わなければならないとし、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁じたものです。
この直接払の原則は、通貨払の原則や全額払の原則と異なり、例外は認められていません。ただし、本人に支払うのと同一の効果を生ずると認められるような使者に対して支払うことは、さしつかえないものとされています。
お題の場合、現金書留により賃金を支払うというものであり、この現金書留という方法は、現金を運ぶ一手段であって、その支払い対象は労働者以外の者ではなく、あくまで労働者本人と考えられます。
したがって、現金書留による送金も可能であると考えます。
<POINT1.未払賃金の支払い義務>
賃金はもともと、労働契約により支払いが義務づけられており、さらに、労働基準法で厳格な支払いが求められています。
したがって、未払賃金があるのであれば、放っておいて請求されるまで待ってよいということではなく、使用者には支払うべき義務があるといえます。すなわち、請求がなくても給与の支払日には使用者は給与を支払わなくてはならず、また、退職する者に対しても、請求があれば7日以内に未払賃金を支払わなくてはなりません。
しかし、使用者が賃金支払いの準備をしていても、お題のように労働者が遠隔地に引越しをしており、現金手渡しができない場合には、賃金の支払い方法が問題となってきます。
<POINT2.持参債務と取立債務>
賃金支払いの場所については、会社が労働者に持参して支払うのか、労働者が会社に対して取立てを行って支払うのかの問題があります。前者を持参債務、後者を取立債務といいます。
民法上では持参債務が原則とされていますが、労働契約にもとづく賃金支払は、一般的に会社で行われていることから、取立債務であるとされています。つまり、債権者である労働者が、債務者である会社の住所地で賃金を取り立てて支払いを受けることになります。
では、退職した労働者が遠隔地に住んでいる場合、労働者は会社まで賃金を取立てにこなければならないのか???、そこで、お題のような現金書留による送金が可能かどうかが問題となります。
<POINT3.直接払の原則>
労働基準法上の「直接払の原則」は、賃金は直接労働者本人に支払わなければならず、労働者本人以外の者に賃金を支払うことを禁じたものです。これは、親方や職業仲介人が労働者に代わって賃金を受け取ることにより、中間搾取をしたり、また親権者が年少者の賃金を取り去ったりする等の旧来の弊害を除去し、労働者が、自己の労働の対価である賃金を確実に受け取れるようにしたものです。
この原則は、民法の委任、代理等の規定の特則を規定したものであり、労働者の親権者やその他の法定代理人に賃金を支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは禁じられています。
また、この原則は、労働基準法第24条で定められている賃金支払方法のうち、通貨払の原則や全額払の原則とは異なり、例外は認められていません。そのため、いかなる場合でも労働者本人に直接、賃金を支払わなければなりません。
ただし、本人に支払うのと同一の効果を生ずると認められるような使者に対して賃金を支払うことは、さしつかえないものとされています。代理か使者かを区別することは、実際上困難な場合が多いですが、社会通念上本人に支払うのと同一の効果を生ずると認められる者であるかどうかで決められることになります。たとえば、労働者本人が病気等のため賃金の受取りにこられないような場合に、配偶者や子などが、本人の使者として賃金を受領にきたとき、これらの者に賃金を支払うことは、直接払の原則の趣旨に反するものではありません。
<POINT4.現金書留による送金>
ここで、お題の現金書留による賃金の送金が直接払の原則に反するか否かが問題となりますが、現金書留という方法は、労働者以外の者に支払われるのではなく、あくまで労働者本人に支払われるケースであるといえます。すなわち、現金書留は、郵便機関を利用して現金を運ぶ手段であり、使者による受領同様直接払の原則に反することはないと考えられます。
なお、この場合においても、①労働者本人からの申し出であることおよび住所の確認、②郵送料金の負担者の確認などをあらかじめ行っておくことをお勧めします。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
≪参考となる法令・通達など≫
- 労基法23条、24条
- 民法484条
