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■育児介護休業からの復職後の昇給昇進について確認する。

 当J社では、現在数名の社員が育児休業中だが、その中のひとりが、約1年の育児休業を終えて来月復職する。

 復職後の昇給や昇進について、どのように扱えばよいのかよくわからない。実際どのように対処したらよいのか。

 育児・介護休業後の育児・介護休業者の昇給、昇進については、法律上の規定がないので、労使間の話合いで取り決めることになります。さまざまな事情を考慮して、合理的に対応するのがよいと考えます。

 しかし、育児・介護休業の権利を行使したことを理由に不利益な取扱いをしてはいけません(子の看護等休暇および介護休暇についても、その権利を行使したことを理由として労働者を不利益に扱うことは育児・介護休業の場合と同様に禁止されています。)。

 なお、復職後の昇給、昇進の取扱いなど育児休業および介護休業に関する定めは、就業規則などであらかじめ明らかにしておく必要があります。

<POINT1.育児・介護休業法における取扱い>

 育児・介護休業、子の看護等休暇および介護休暇(以下「育児・介護休業等」という。)の期間中は労務の提供がないので、事業主は、金銭給付その他の待遇について保障する義務はないと考えられています。

 また、育児・介護休業等の後の昇給、昇進の取扱いについても法律上は、特に規定はありませんので、労使間の話合いで決めることとなります。

 育児・介護休業法は育児・介護休業等の権利を行使した者の不利益取扱いの禁止については、休業・休暇の申出や取得を理由とする解雇の禁止や年次有給休暇の取得要件である出勤率の計算以外は、特に定めていませんが、これは何をもって不利益とするのか特定が難しく、その判断がケース・バイ・ケースとならざるをえないためです。

 しかしながら、厚生労働大臣が定めた「事業主が講ずべき措置に関する指針」において、休業・休暇中の処遇や休業後の労働条件等が、育児・介護休業等の権利を行使したことを理由としてその労働者を不利益に取り扱うものであってはならないとされています。

 この点について、産前産後休業とこれに続く育児休業から復職した従業員の役割グレードの引下げ、役割報酬の減額、成果報酬ゼロの査定により年俸を引き下げたことが、人事権の濫用として無効とされた判例(コナミデジタルエンタテインメント事件[東京高判平23.12.27])があります。

 また、育児休業を取得した従業員に対し、定期昇給において職能給を昇給させなかったり、昇格試験を受験する機会を与えなかったことが不法行為上違法であるとした判例(医療法人稲門会事件[大阪高判平26.7.18])もあります。

 したがって、育児・介護休業等の権利を行使したことを理由に昇給、昇進を差別的不利益的に取り扱うようなことはもちろん許されません。

 

<POINT2.就業規則での取決め>

 育児・介護休業等の終了後の昇給、昇進の取扱いについては、特に法律で制限や基準を設けているわけではなく、労使間での取決めによるので、あらかじめ就業規則などで明らかにしておく必要があると考えます。

 育児・介護休業法においても、労働者の休業・休暇中の待遇や休業・休暇後の賃金、配置その他の労働条件に関する事項などについてあらかじめ定めるとともに、これを労働者に周知させるための措置(労働者もしくはその配偶者が妊娠または出産したことを知ったときに、その労働者に対し知らせる措置を含みます。)を講ずるよう事業主に対して努力義務を課しています。

 また、休業・休暇を申し出た労働者に対しては、すみやかにその労働者にかかる取扱いを書面交付により明示するよう努めなければならないとしています。

 

<POINT3.昇給、昇進の実施時期>

 休業・休暇期間中に昇給、昇進が予定されている時期がある場合に、通常どおりこれを実施するかどうかは、あらかじめ決めておく必要があります。

 実際の例では、休業・休暇期間中でも通常どおりの時期に実施するところもありますし、復職時に調整したりあるいは時期を延伸して実施するところもあります。休業期間と重ならない場合には、通常どおりの時期に実施することになるのだろうと考えます。

 いずれの方法をとるにしても、育児休業後の昇給や昇進について育児・介護休業等の権利行使を理由とする差別的な取扱いがなされないように対応する必要があります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 育児・介護休業法10条、16条、16条の4、21条の2
  • 育児・介護休業則71条
  • 平21.12.28厚労告509
  • 平28.8.2職発0802第1・雇児発0802第3
  • コナミデジタルエンタテインメント事件[東京高判平23.12.27]
  • 医療法人稲門会事件[大阪高判平26.7.18]