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■従業員の自己都合退職の申し出を拒否する場合を考える

 従業員から、次の就職先が決まったため、当社を退職したいとの申し出があった。

 その従業員は、入社以来、何年もかけて社員教育をしてきたうえ、仕事への熱意も見られるため、今後も当社で働き続けてもらいたいと考えているのだが、退職の申し出を拒否することは可能か。

 お題の内容から推察すると、当該従業員は無期労働契約で雇用し、教育訓練をしてきた者と考えられますが、そのような従業員からの退職の申し出が辞職の通告である場合には、退職を思いとどまるよう話合いを行うことはさしつかえありませんが、退職の申し出から2週間経過すれば退職の効力が発生しますので、この期間をこえて引き留めることは法律的には困難であると思われます。

 一方、退職の申し出が合意退職の申し出の場合には、まずは、当該従業員の退職の申し出の意思を確認しながら、遺留の説得を試みることになろうかと思います。

 しかし、合意退職の申し出であっても、従業員の意思が変わらないのに、長期間にわたって退職の承諾をしないというのも適切ではありませんので、従業員の退職の意思が変わらないと考えられる場合には合理的な期間内に退職の申し出を承諾することが適当と考えます。

<POINT1.退職の申し出>

 従業員からの退職の申し出については、大別して2つの類型があります。

  1.  1つは、従業員が退職の意思を固め、これを会社に一方的に通告するような申し出の場合、このような申し出による退職を「辞職」と呼んだり「任意退職」と呼んだりします。
  2.  もう1つは、従業員が退職を希望して会社にこれを承諾してもらうよう申し出る場合です。この場合には、会社が社員の申し出を承諾し、両者の合意が成立すれば退職の効力が発生します。このような申し出による退職を「合意退職」と呼んだりします。

 

<PIONT2.退職の自由>

 辞職を自由にできるかどうかについては、労働契約期間があるかどうかによってその取扱いが異なります。すなわち、労働契約期間がない、いわゆる無期労働契約で働く者の場合には、いつでも自由に退職の申し出ができ、原則として申し出から2週間が経てば退職の効力が発生します(民法6277条1項)

 一方、労働契約期間のある、いわゆる有期労働契約で働く者の場合には、その期間の途中で辞職しようとする場合には「やむを得ない事由」がなければなりません(民法628条)

 ただし、例外として、有期事業に必要な期間を定める場合を除き、1年をこえる有期労働契約の場合には、1年経過後にはいつでも辞職することができることとされています(労基法137条)

 なお、合意退職の申し出については、特段の法律上の制限はないので、有期労働契約の場合であっても自由にこれをすることができます。

 

<PIONT3.就業規則による退職の制限>

 会社は、退職に関する事項については、就業規則において定めておくことが必要です(労基法89条)。

 そこで、会社の意に反した退職を防ぐために、就業規則において退職の手続を・・・となりますが、例えば、辞職の申し出の効力の発生時期を民法で定める2週間より延長したり、会社の承認があるまでは退職の効力が発生しないと規定することが有効にできるのかということが問題となります。

 この点に関しては、高野メリヤス事件[東京地判S51.10.29]においては、「民法第627条の予告期間は、使用者のためには、これを延長できないものと解するのが相当である」とし、「解約申入れの効力発生を使用者の許可ないし承認にかからせることを許容すると、労働者は使用者の許可ないし承認がない限り退職できないことになり、労働者の解約の自由を制約する結果となる」ので、そのような就業規則の規定は効力を有しないとされています。

 

<PIONT4.お題のケースについて>

 お題からは詳細がわかりませんが、何年もかけて社員教育をしてきたという点からすると、当該従業員は無期労働契約で働く者であると推測できます。

 そうであれば、従業員からの退職の申し出が辞職の通告である場合には、退職を思いとどまるよう話合いをすることはさしつかえありませんが、退職の申し出から2週間経過すれば退職の効力が発生しますので、この期間をこえて引き留めることは法律的には困難であると考えます。

 一方、退職の申し出が合意退職の申し出の場合には、まずは当該従業員の退職の申し出の意思を確認しながら、遺留の説得を試みることが適当と考えます。この場合に気をつけなければならないことは、退職の撤回を強要するような言動は避けなければなりませんし、合意退職の申し出であっても、従業員の意思が変わらないのに、長期間にわたって退職の承諾をしないというのも適切ではないので、従業員の退職の意思が変わらないと考えられる場合には合理的な期間内に退職の申し出を承諾することが適当と考えます。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


≪参考となる法令・通達など≫

  • 民法627条、628条
  • 労基法89条、137条

《参考となる判例》

  • 高野メリヤス事件[東京地判S51.10.29]