出社した従業員の顔色が優れず、気分も悪そうだったで、本人は「大丈夫」といっていたが強制的に帰宅させた。
この場合、本人が希望すれば年次有給休暇として扱うことはできるのか。
従業員の病状等によっては使用者の責めに帰すべき事由による休業にあたり、休業手当の支払いが必要になる可能性がありますが、退社後の時間について、年次有給休暇の事後の申請を認め、年次有給休暇として扱うことは可能です。
この場合、付与する年次有給休暇は、就業規則において半日単位の付与の定めがあり、退社後の時間が半日相当であれば半日の付与ができますし、また、時間単位の付与について労使協定を締結している場合には、退社後の時間数に応じて時間単位で付与することになると考えられます。
<POINT1.使用者の責めに帰すべき事由による休業>
労働基準法では、使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、休業期間中当該労働者に、その日について平均賃金の100分の60以上の手当(以下、「休業手当」という。)を支払わなければならないとされています。この「使用者の責めに帰すべき事由」とは、労使関係における労働者保護の観点から民法第536条第2項の「債権者の責めに帰すべき事由」よりも広く、経営上の障害なども含むものと解釈されています。
お題の場合、従業員の体調が優れないということが原因であっても、使用者が強制的に帰宅させたということですから、「使用者の責めに帰すべき事由」に該当するものと考えられます。
ただし、従業員が「伝染性の疾病等」にかかったことで、法令・就業規則に基づく就業禁止措置として帰宅命令を出したのであれば、使用者の責に帰すべき事由には該当しません。
<POINT2.一部休業の賃金の取扱い>
1日の所定労働時間の一部のみを使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合でも休業手当を支払わなければならない場合があります。
労働した時間分の賃金を支払っていたとしても、その日の賃金が全体として平均賃金の100分の60に達しない場合には、その差額を支払わなければなりません。
<POINT3.年次有給休暇の事後の申請>
年次有給休暇の請求は、使用者の時季変更権を行使できるだけの時間的余裕をもって行われるべきですから、年次有給休暇の事前届出期限を就業規則などに定めている場合において、事前に届出がなされていないのであれば事後の請求を認める必要はありません。
しかし、急な病気や事故などのように事前に申請することが不可能な場合など、これらやむを得ない事情がある場合については、事後の申請により年次有給休暇の取得を認めることは、会社の裁量によるものであり、問題ないものと考えす(詳細は、前掲「■事前に届出のない年次有給休暇の取得について考える - Epic & company ページ!」を参照してください。)。
<POINT4.半日単位の付与>
お題の場合、従業員の退社後の時間について、年次有給休暇の取得を認めるとすると、当該年次有給休暇の単位はどうなるのでしょうか。
年次有給休暇の付与は、原則として1日単位とされています。ただし、労働者が半日単位での取得を希望し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の障害とならない範囲で運用される限りにおいて半日単位で付与することは差し支えないとされています。
お題の場合、就業規則に半日単位の付与の定めがあり、当該退社後の時間が半日相当であるなら、それにより半日の年次有給休暇を付与することが考えられます。
<POINT5.時間単位の付与>
また、次の1.から5.の事項を定めた労使協定を締結することにより、年5日の範囲内で時間を単位として年次有給休暇を付与することができます。
- 時間単位年休の対象労働者の範囲
- 時間単位年休の日数
- 時間単位年休1日の時間数
- 1時間以外の時間を単位とする場合の時間数
お題の場合、労使協定により、時間単位の年次有給休暇付与制度がある場合には、退社後の時間数に応じて時間単位の年次有給休暇を付与することも考えられます。
※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※
《参考となる法令・通達など》
- 労基法26条、39条
- 安衛法68条
- 昭27.8.7基収3445
- 昭63.3.14基発150・婦発47
- 平21.5.29基発0529001
