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■退職金は必ず支払うべきか確認する。

 当社は、今年度まで給与や賞与が同業他社に比較してかなり高額であったため、退職金制度を設けていなかった。退職金は必ず支払わなければならないものか。

 また、来年度から、会社に対して貢献度の高かった従業員に限り、あるいは好況時に限って退職金を支払うことを就業規則に盛り込むつもりだが、それは可能か。

 退職金は法律上その支給が強制されているものではなく、退職金制度を設けるか否か、設けたとしてもどのような制度にし、どのように運営するかについては、法律は全く関与しておらず、当事者が自由に定めることができます。

 なお、一定の従業員に限って退職金を支給することについては、それが労働者の国籍、信条または社会的身分もしくは性別による差別でなければ、法律の関与するところではありません。

 なお、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則において退職手当の定めをする場合には、少なくとも適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項については規定を設け、行政官庁に届け出なければなりません。

<POINT1.割退職金の性格>

(1)経済的性格

 雇用関係の終了時に、労働契約の一環として、場合によっては労働契約に付随してあらかじめ定められた規定などにより、事業主またはその委託機関から労働者に対して支給される給付を、総称して退職金と呼んでいます。

 退職金の経済的性格については、功労報償説、賃金後払説、生活保障説などいろいろな考え方があります。

 功労報償説とは、退職金を労働者の在職中の功労に対する報酬であるとするもので、これは使用者側の考え方の基調をなしているものです。

 賃金後払説とは、労働者が在職中に当然支払われるはずであった賃金の一部を退職時に支払うものであるとするものです。

 生活保障説とは、労働者の退職後における生活保障のために支払うものであるとするものです。昭和43年の最高裁判所の判決では、国家公務員などの退職手当の性格について、「国家公務員等退職手当法に基づき支給される一般の退職手当は、同法所定の国家公務員又は公社の職員が退職した場合に、その勤続を報酬する趣旨で支給されるものであって、必ずしもその経済的性格が給与の後払の趣旨のみを有するものではないと解される」としています(小倉電話局事件[最判昭43.3.12])。

(2)法的性格

 退職金の法的性格について、それが労働基準法の賃金であるかどうかは、(1)の経済的性格とは別の観点から検討されます。 労働基準法上の賃金であるためには、労働の対償として使用者が労働者に支払うものでなければなりません。

 退職金について問題となるのは、労働の対償といえるかどうかという点ですが、あらかじめ労働協約、就業規則、労働契約などにより支給条件の明確なものについては、使用者が労働条件の一つとして退職金の支給を定めたものであり、労働の対償として支払うものと考えられますから、すなわち賃金といえます。

 このように、あらかじめ支給条件の明確な退職金のみを労働基準法上の賃金として保護するのは、恩恵的、任意的なものと考えられる退職金は、その支給条件が種々雑多であり、かつそれが明確でない場合もありますので、このような場合までも労働基準法上の賃金として保護し、罰則をもってその支払いを強制することはできないからです。

 また、就業規則などにより支給条件が明確に定められている退職金について、当該退職金の支払準備の方法として確定給付企業年金制度、中小企業退職金共済制度などの社外積立型退職金制度を利用していたとしても、使用者が労働基準法上負う義務には変わりはありません。

 いずれにしても、退職金は法律上その支給が強制されているものではなく、退職金制度を設けるか否か、設けたとしてもどのような制度にし、どのように運営するかについては、法律は全く関与しておらず、当事者が自由に定めることができます。

 退職金の支払準備の方法の一つとして多くの企業では「適格退職年金制度」が利用されていましたが、同制度は、平成24年(2012年)4月1日以降は税制上の優遇措置が受けられなくなりました。

 そこで、同年3月31日までに、引続き税制上の優遇措置を受けるために、3割の事業主が中小企業退職金共済制度に、2割の事業主が確定給付企業年金制度に、1割の事業主が確定拠出年金制度に移行しました。いうまでもなく、適格退職年金の廃止は、あくまでも退職金の積立方法の問題であり、退職金制度自体が廃止されるわけではありません。ここで改めて、退職金の算定基礎についても「年功重視から実績・貢献度重視へ移行」していると考える企業も多数を占めることから、退職金制度全般についての見直しの時期にきていることと思われます。

 

<POINT2.差別的取扱いの禁止>

 労働者の国籍、信条または社会的身分もしくは性別によって、退職金について支給条件や支給率、金額などに差別的取扱いを行うことはできません。

 

<POINT3.賃金の支払いの原則>

 退職金については、臨時に支払われる賃金であることから、賃金の支払いの5原則のうち毎月払いの原則および一定期日払いの原則の適用はありませんが、その他の通貨払いの原則、直接払いの原則および全額払いの原則の適用があることはいうまでもありません。ただし、退職金については、使用者は労働者の同意を得た場合にはその支払いについて銀行振出し小切手などによることができます。

 

<POINT4.就業規則との関係>

 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、労働基準法第89条の規定にもとづいて必ず就業規則を作成しなければならないものとされていますが、退職金についてはいわゆる相対的必要記載事項とされており、退職金の支給についての制度を設ける場合には、少なくとも適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期に関する事項について、明確に就業規則に記載して、行政官庁に届け出なければなりません。

 

<POINT5.パート・有期雇用法では>

 パート・有期雇用法では、事業主はパートタイム・有期雇用労働者を雇い入れた時に退職手当の有無については、文書の交付など(希望した場合には電子メール等(電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信の送信の方法(当該短時間労働者短時間・有期雇用労働者が電子メール等の記録を出力することによる書面を作成することができるものに限ります。)やFAXでも可能)により、速やかに明示することが義務づけられています。

 

<POINT6.退職金の支払時期>

 退職金も労働協約、就業規則、労働契約などによりあらかじめ支給条件が明確なものは賃金であることはすでに述べたとおりですが、したがって、そのような退職金は労働基準法第23条の適用を受けます。このため、使用者は、退職金についても、退職労働者の請求があったときから7日以内に支払わなければならないと考えられます。

しかし、退職金については、延払いや分割払いが定められたり、特に最近では一時金ではなく年金制を採用する企業も多く、その支払期間が相当長期にわたる場合も少なくありません。このような場合にまで、一般の賃金と同様に所定の支払日に関係なく労働者の請求があった日から7日以内に支払わなければならないとするのは、実情に適さない面があります。すなわち、退職金は退職前にあっては退職事由の如何によっては支給されないこともある期待権にしかすぎません。

 したがって、労働基準法上も、一般の賃金と異なって毎月払い、非常時払いの対象とされておらず、また、退職金制度を設けるか否かについても法律は関与しておらず、もっぱら使用者が自由に定めることができるとしています。また、実際に退職金の分割ないし延払いが定められる事例では、退職金額の基準そのものがこのような支給期限との見合いできめられることも少なくありませんし、特に年金制の退職金制度を設けることは、労働者に不利なものではなく、かえって労働者の生活を安定させ、労働者の福祉の観点から望ましいものといえるでしょう。

 以上のような点から、退職金については、一般の賃金と異なって、退職後請求があってから7日を経過しても、あらかじめ特定した支払期日が到来するまでは、これを支払わなくても労働基準法第23条の趣旨に反しないものと考えられます。

<参考:同一労働同一賃金ガイドライン>

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法3条、4条、23条、89条
  • パート・有期雇用法6