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■飲食店チェーンの店長の管理監者性について確認する

 当社は、飲食業のチェーン店を経営している。

 当チェーン店の各店長は、コック等の従業員6~7名を統制したうえ、ウェイターの採用にも一部関与し、材料の仕入れ、売上金の管理等もまかせている。また、店長手当も月額2~3万円を支給しているが、営業時間中は、原則として店に常勤することになっており、ときには、ウェイター、レジ係、掃除等の仕事も手伝うことがある。

 現在、各店長には管理監督者であるとの理由から残業手当などは一切支給していないが、問題ないか。

 ファミリーレストランをはじめ、チェーン店の形態により展開する小売業、飲食業等の店長等が管理監督者にあたるかどうかについては、「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」、「賃金等の待遇」といった観点から具体的な判断要素が通達(平20.9.9基発0909001)により示されています。

 お題のチェーン店の店長が管理監督者にあたるかどうかについては、店長としての管理監督の仕事の部分を担ってはいるものの、ウェイター、レジ係、掃除など、一般的な労働者の仕事も手伝うなど、労働時間に関しての裁量があるとはいえないこと支給されている店長手当の額からみても、特に優遇されているとはいえないことなどから、管理監督者には該当しない可能性が高いものと考えます。

 社内の職制上、管理職と位置付けている従業員であっても、必ずしも労働基準法上の管理監督者に該当するとは限りません。各店長が労働基準法上の管理監督者に該当しない場合には、時間外労働に対する割増賃金の支払義務が生じることとなります。

<POINT1.管理監督者の範囲>

 労働基準法第41条第2号に定める「監督もしくは管理の地位にある者」、いわゆる管理監督者については、労働基準法上の労働時間、休憩および休日に規定が適用されないこととなっています。

 この「監督もしくは管理の地位にある者」とは、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠をこえて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有しており、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限られます。一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされていますが、職制上の名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものであるとされています。

 

<POINT2.多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化>

 小売業、飲食業等において、いわゆるチェーン店の形態により相当数の店舗を展開して事業活動を行う企業における比較的小規模の店舗においては、店長等の少数の正社員と多数のアルバイト・パート等により運営されているケースが珍しくありません。

 これらの店舗の店長等が管理監督者に該当するか否かについては、これまでも、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩および休日に関する規制の枠をこえて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様および賃金等の待遇を踏まえ、総合的に判断することとされていました。

 しかしながら、十分な権限、相応の待遇等が与えられていないにもかかわらず、労働基準法第41条第2号に規定する「監督もしくは管理の地位にある者」(以下「管理監督者」という。)として取り扱われるなどの不適切な事案が多くみられています。

 そこで、店舗における管理監督者の範囲の適正化を図るため、厚生労働省の通達(平20.9.9基発0909001)では、店舗における実態や最近の裁判例を踏まえ、「職務内容、責任と権限」、「勤務態様」、「賃金等の待遇」の観点から店舗の店長等の管理監督者性の判断にあたっての特徴的な要素を具体的に整理した内容が示されています

 

<POINT3.店舗の店長等の管理監督者性の判断にあたっての特徴的な要素>

(1)「職務内容、責任と権限」についての判断要素

 店舗に所属する労働者に係る採用、解雇、人事考課および労働時間の管理は、店舗における労務管理に関する重要な職務であることから、「職務内容、責任と権限」について、次のような場合は、管理監督者性を否定する重要な要素となります。

イ.採用

 店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含みます。)に関する責任と権限が実質的にない場合

ロ.解雇

 店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合

ハ.人事考課

 人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいいます。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合

ニ.労働時間の管理

 店舗における勤務割り表の作成または所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合

 

(2)「勤務態様」についての判断要素

 管理監督者は、「現実の勤務態様も、労働時間の規制になじまないような立場にある者」であることから、「勤務態様」については、遅刻、早退等に関する取扱い、労働時間に関する裁量および部下の勤務態様との相違により、次のように判断されるものであるとしています。

イ.遅刻、早退等に関する取扱い

 遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での負の評価など不利益な取扱いがされる場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。

 ただし、管理監督者であっても過重労働による健康障害防止や深夜業に対する割増賃金の支払いの観点から労働時間の把握や管理を受けている場合については管理監督者性を否定する要素とはなりません。

ロ.労働時間に関する裁量

 営業時間中は店舗に常駐しなければならない、あるいはアルバイト・パート等の人員が不足する場合にその業務に自ら従事しなければならないなどにより長時間労働を余儀なくされている場合のように、実際には労働時間に関する裁量がほとんどないと認められる場合には、管理監督者性を否定する補強要素となります。

ハ.部下の勤務態様との相違

 管理監督者としての職務も行うが、会社から配布されたマニュアルに従った業務に従事しているなど労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合には、管理監督者性を否定する補強要素となります。

 

(3)「賃金等の待遇」についての判断要素

 管理監督者の判断にあたって「賃金等の待遇」については、基本給、役職手当等の優遇措置、支払われた賃金の総額および時間単価により、次のように判断されるものであるとされています。

イ.基本給、役職手当等の優遇措置

 基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規定が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められるときは、管理監督者性を否定する補強要素となります。

ロ.支払われた賃金の総額

 1年間に支払われた賃金の総額が、勤続年数、業績、専門職種等の特別の事情がないにもかかわらず、他店舗を含めた当該企業の一般労働者の賃金総額と同程度以下である場合には、管理監督者性を否定する補強要素となります。

ハ.時間単価

 実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗に所属するアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合には、管理監督者性を否定する重要な要素となります。特に、このように換算した時間額が最低賃金額に満たない場合は、管理監督者性を否定する極めて重要な要素となります。

※当記事作成日時点での法令に基づく内容となっております※


《参考となる法令・通達など》

  • 労基法41条2項
  • 昭22.9.13発基17
  • 昭63.3.14基発150・婦発47
  • 平20.4.1基監発0401001
  • 平20.9.9基発0909001
  • 平20.10.3基監発1003001
  • <厚生労働省:「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(平成20年9月9日付け基発第0909001号)」に関するQ&A>https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/10/tp1003-1.html